コンポストという畑の料理

コンポストについて考えるとき、橋本力男さんの「畑の料理」という言葉を思い出します。
堆肥づくりは、ただ落ち葉や野菜くずを分解する作業ではありません。素材を選び、空気や水分の加減を見ながら、時間をかけて仕上げていく――
まるで料理のような営みです。
その視点で見つめると、虫や微生物の働き、人の手の添え方、そして土の変化までが、ひとつの命の流れとして見えてきます。

燦燦Villaでは、屋外型の好気性コンポストを使い、野菜くずや落ち葉、藁などを重ねながら発酵を進めています。
水分と炭素のバランスを保ち、切り返しのタイミングを見極めるのは、ちょうど料理で“火加減”を見るようなもの。
虫たちは小さな料理人、微生物は味を整える名脇役。人はその流れに、そっと手を添えるだけです。

堆肥づくりは、「発酵」と「腐敗」の境目を見極めることでもあります。
におい、温度、虫の動きに敏感になることで、自然と対話する感覚が育っていきます。
そして「何を土に還すか」「どう育てるか」という日々の選択が、やがて野菜の味わいを変え、食べる人の心にも届く。
だからこそ、堆肥づくりは暮らしの感性を育てる営みだと思うのです。

完熟たい肥完成まで半年

燦燦Villaのコンポストは、橋本力男先生の教えをもとに、ネイチャーファームの村田さん、野口さんから学びながら行っています。
自然の力だけでゆっくりと発酵を進める方法で、完熟たい肥ができるまでおよそ4か月から半年。時にはそれ以上の時間がかかります。中熟堆肥はまだ発酵の途中にあるため、畑の準備段階や土づくりの工程で使われることが多い堆肥です。
一方、燦燦Villaでつくる完熟たい肥は、発酵がすっかり落ち着き、やさしい香りで、すぐに苗を植えられるほど穏やか。
それぞれに役割があり、畑の状態や季節に応じて使い分けることで、より豊かな土づくりにつながります。

子どもたちや来訪者がコンポストをのぞき込み、「あったかい!」と驚く姿を見るたびに、命の循環を五感で感じることの尊さを思います。コンポストは、自然の時間軸を教えてくれる存在。急がず、でも確実に、命がめぐることを教えてくれます。


燦燦Villaのコンポストの材料は淡路島で取れたものに限定しています。落ち葉もこの辺りでとれるものを使うことで、土着菌と呼ばれる葉っぱについている菌が淡路島の風土から生まれ合ったものが根付いています。たい肥が淡路島産になるということは、輸入に頼らず作り出すことができるという意味で、たい肥も輸入に頼っている農業の現状から脱し、持続可能な作物の生産へのつながります。

「捨てる」のではなく「還す」。
その行為には、感謝と敬意が込められています。
コンポストは、そんな思いを形にする手段であり、地球との対話でもあります。
訪れた人には、ぜひその“畑の料理の香り”を感じてもらいたい。
土の中でゆっくり育まれる命の味わいを、暮らしの中にも取り入れてもらえたら嬉しいです。

まだまだ奥深いこの領域、微生物の動きや発酵の具合、素材の組み合わせ……毎回新しい発見があります。
うまくいかないこともありますが、それもまた自然との対話です。むしろ、わからないことが多いからこそ、面白いと感じています。
土に還るという営みを通じて、時間の流れや命の質を学びながら、少しずつ土や虫との距離が近づいていく。
そんな日々を、これからも大切に重ねていきたいと思います。

関連記事一覧

ご予約はこちら
PAGE TOP