畑で土に触れると、草の匂いや雨上がりの湿り気、手のひらに伝わるぬくもりから、「土って生きているんだな」と感じます。
草を刈ったあとにふわっと立ち上る青い香り。素手で握ったときの、しっとりとした感触。
そんな瞬間に、思わず土に話しかけたくなることがあります。
燦燦Villaの畑では、日々の作業もまるで対話のようです。
「今日はどうした?」と土に声をかけながら、乾き具合や重たさ、虫の動きを確かめます。
言葉を持たない土ですが、触れているといろんなことを教えてくれます。
その声に耳を傾けながら、今日も畑に立っています。

土づくりでは、急がず、自然の流れに委ねることを大切にしています。
落ち葉や草、生ごみをコンポストでじっくり発酵させ、時間をかけて土へ還す。
微生物の力を借りながら、ゆっくりと育てていくのです。
土の色や香り、手触りから、今の状態や働き具合が見えてくる――
それもまた、自然の語りかけのひとつです。
農業を続ける中で感じるのは、「作物を育てる前に、まず土を育てることが大切」ということ。
土が元気であれば、作物も自然とすくすく育ちます。
人はその流れに少し手を添えるだけ。
目には見えない微生物たちがせっせと働き、ふかふかの土をつくり、根を支えてくれている。
そんな小さな命の働きを感じるたびに、胸の奥があたたかくなります。
地球の営みを感じる時間
百姓の仕事をしていると、地球の営みの中に自分も生かされているのだと実感します。
暑い日も寒い日も、思うようにいかないこともあるけれど、それもすべて「生きている」という証。
自然の厳しさの中に、命の確かさを見つけられるように思います。
土に触れる体験は、訪れた人にも新しい気づきをくれます。
「こんなにあたたかいんだ」「柔らかい」「土って匂いがあるんだ」と驚く声を聞くと、
あらためて、土の力の大きさを感じます。
自然と向き合うとは、効率や見た目だけではなく、目に見えないものを感じ取ること。
その感覚を少しでも持ち帰ってもらえたら、と願っています。

そして、「大地を感じる」という言葉を聞くと、私の中にはこんな思いが浮かびます。
”土は、命の記憶を抱えている。”
畑に立ち、土に手をあてると、そこに積み重なってきた無数の命の気配を感じます。
草の根が土を押し広げ、虫が通った跡が残り、雨が染み込んで微生物が動き出す。
そうした目に見えない営みの連なりが、次の命を育てる力になっていくのです。
土に触れるとき、私たちはその命の流れの一部になります。
その静かなひとときが、心の奥の感覚をゆっくりと整えてくれる。
大地を感じるとは、そんな命の鼓動に、自分のリズムを重ねることなのかもしれません。






