






淡路島は、イザナギとイザナミの国産み神話の舞台であり、伊弉諾神宮 を擁する。
荒ぶる外海と静かな内海を隔てるこの地は、凪(ナギ)と浪(ナミ)のあわいにあり、
人々は古くから凪に神聖さを見いだしてきた。
農業関連施設の客室棟の設計にあたっては、農耕のふるまいと凪へのまなざしを建築に重ねたいと考えた。
大地を農作業に開放すべく二層のボックスを浮かせ、巨木と共に日影を作った。ボックス
の長手軸は、太陽の転換日である冬至の日没と夏至の日の出に向き、農耕の節目を刻む。
日の出側の寝室には朝日が涼しい時間帯の労働をささやき、
畑を望むキッチンに染み入る夕陽は、農と食の循環を結ぶ。90度振ったもう一方の軸は谷筋の先の海に向く。
一階の浴室と二階のダイニングの窓を開ければ、 夏でも涼しい風が吹き抜ける。
草原のように騒めく森が、神が降り立つような静寂へと変わる瞬間を、あなたは目撃するだろうか。
これは太陽と風と共に生きる人のための建築である。
株式会社NAP建築設計事務所 建築家 中村 拓志