草とともに生きる畑

「雑草」という言葉には、どこか「抜くべきもの」「邪魔なもの」といった印象があります。
実際、私たちの畑でも除草を行うことはあります。手を入れることで景観が整い、畑や施設がすっきりと見え、お客様を気持ちよくお迎えできる環境になります。草の勢いが強すぎると、どうしても荒れた印象になってしまうからです。

けれど、私たちは一方で「自然農」の考えも大切にしています。草を完全には抜かず、必要に応じて残す方法です。草の根は土を守り、水分を保ち、虫や微生物たちのすみかにもなります。草があることで、畑の中に小さな命の循環が生まれ、土地全体が呼吸しているように感じることがあります。

春にはやわらかな草が芽吹き、夏には背の高い草が風に揺れます。その移ろいを眺めながら、私たちは季節ごとの畑のリズムを感じています。

お客様の中には、日常で農業に触れる機会が少なく、虫を見て驚かれたり、雑草があると「整っていない」と感じられる方もいらっしゃいます。それは都会での生活の中では自然な感覚です。だからこそ、私たちは“自然のありのまま”と“心地よい景観”のあいだで、丁寧にバランスをとりながら手入れをしています。

畑の今の声を聴く

草があることで、地面の乾燥が防がれ、虫たちの居場所が生まれます。根が張ることで土はやわらかくなり、微生物が活発になります。作物の根も深く伸び、乾燥や高温に強くなる。草が畑の力を引き出してくれているのです。

季節によって顔を出す草の種類も変わります。
春にはスズメノカタビラやナズナ、夏にはメヒシバやエノコログサ、秋にはカヤツリグサやイヌタデ。それぞれの草が、その季節の気温や湿度、土の状態を教えてくれます。草の姿を見れば、畑の今の声が聞こえるのです。

雑草は、畑からのサインでもあります。
たとえば土が酸性に傾くとスギナが増え、水はけの悪い場所にはカヤツリグサが生えやすい。草の種類や勢いを観察することで、土や気候の変化を読み取っています。草を見て、土に聞く。そんな感覚で、私たちは日々畑と向き合っています。

訪れる方には、少し草が揺れる畑の風景からも、自然の豊かさを感じていただけたらと思います。
整いすぎず、風と虫と命がめぐる畑。そこに立つと、自然との距離がほんの少し近づく——

そんな体験をお届けできれば嬉しいです。

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