自然との関わり ― 虫とともに生きるということ

地球が誕生したのは、約46億年前のこと。
長い時間の中で、岩が風化し、雨や風が大地を削り、微生物たちが命を吹き込みました。
そうして土が生まれ、そこに植物が根を張り、虫たちが姿を現しました。
植物が陸に上がったのは約4億7千万年前。虫が地上に現れたのはその少し前、約4億8千万年前といわれています。
そして、人間が農耕を始めたのは、ほんの1万年前。私たちは、自然の壮大な歴史のほんの末っ子のような存在なのです。

この大きな流れの中で思うのは、「自然を管理する」のではなく、「自然に居てもらう」という感覚の大切さです。
百姓という生業は、自然の一部としてその循環の中に身を置き、命の記憶の上に暮らすこと。
人は主役ではなく、自然のリズムの中で生かされている存在だと感じます。

虫もまた、そのリズムを支える大切な仲間です。
畑で土を掘ると、小さな虫たちが忙しそうに動き回っています。
その姿を見ていると、畑の中にもうひとつの世界が広がっていることに気づきます。
彼らは土を耕し、落ち葉を分解し、微生物の活動を助けてくれます。
虫がいるからこそ土が呼吸し、植物が育ち、命の循環が保たれているのです。

もちろん、農業の現場では作物を食べてしまう虫もいます。
でも、虫は決して“悪者”ではありません。
たとえば、アブラムシが増えればテントウムシがやってくる。
枯れ葉を食べるダンゴムシやミミズが土を柔らかくしてくれる。
ひとつひとつの命が、それぞれの役割を果たしながら、畑という小さな宇宙を支えています。

虫と自然と人間と

虫を“益虫”や“害虫”と呼ぶのは、人の都合によるものです。
けれど、自然の中では立場が常に変わり続けています。
あるときは植物を守る存在であり、またあるときは食べる側にまわる。
その関係性の揺らぎの中にこそ、生命の豊かさが宿っているように思います。

燦燦Villaの畑では、虫を排除するのではなく、その存在を受け入れることを大切にしています。
虫たちは、畑の一員であり、いのちの循環をつなぐ仲間です。
春先に羽音を立てるミツバチ、夏の日差しの下で光るカナブン、夜の畑で土を動かすミミズたち。
そのひとつひとつが、大地の呼吸を感じさせてくれます。

子どもたちが畑で虫を見つけ、「こわい!」と叫んだあとに、少し近づいて観察しはじめる姿を見ると、
その瞬間に“気づきの芽”が生まれたような気がします。
「虫がいる」ということは、そこに命が流れている証。
彼らの小さな営みが、やがて土を育て、野菜を育て、私たちの暮らしを支えてくれています。

自然との関わりは、支配でも管理でもなく、共に生きること。
虫たちを通して見える世界は、人間中心の視点から少し離れた、もっとやさしく、もっと深いものです。
畑に立ち、風や土のにおいを感じながら、目の前の小さな命を見つめていると――
地球に「居させてもらっている」ことのありがたさを、静かに実感します。

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